風のレイヤーをつくる
中学生の頃、とあるきっかけで、アメリカのヨセミテ国立公園という場所に行く機会があった。西海岸のカリフォルニア州にあって、世界遺産にも登録されている公園。幹が太すぎて人の腕を10人回しても足りない木があったり、そもそも広さが宮城県(例えが地元ですみません)の半分という、とにかくスケールの大きな公園だ。
PCでmacを使われている方は、エル・キャピタンという名前を聞いたことがあるかもしれない。あの岩肌こそ、実はこのヨセミテにあるもの。ああいった岩壁があたり一面に広がっている場所だった。少し高台にはそれが一望できるスポットがあって、岩肌が地平線の見えないところまで、何層にもレイヤーに重なって見える。その場所に立つと、いろんなことがどうでも良くなった。自分が小さな存在に感じる、というあれ。
大人になった今も、たまに疲れて海にいったり、無理して山に登ったりして、自然に接するとそんな気分になることがある。自分にはコントロールできないもので覆われていて、その一部でしかないんだなという感覚。それが好きで旅に出る人も多そう。
でも考えてみると、自然だけじゃなくて、基本的には世の中コントロールできないことばかりで、それが日常で、記憶だったり印象に残るのかもしれない。いまもそうだけれど、窓の外で工事が始まった。先週まで緊急事態だったからか静かだったのだけれど一転、集中できない。そう思って窓を閉めに行くと、ちょっと匂いが湿っぽくなっていて、いつの間にか夏のようだ。視覚だけじゃなく、色んな感覚のレイヤーで、色んなコントロールできないことが押し寄せてくる。
DailyCodingを続けるうちに、コードの結果を想像できないことが楽しくなっていった。もちろんはじめはイメージがあるのだけれど、書いているうち、どんどん自分のコントロールを手放していって、離れたところで、何か別な世界があるような、そんな絵になって欲しいと思うようになった。
そういう意味で今回投稿した作品は、DailyCodingでできた作品の中でいちばん好きなもの。『綿』というお題がある中で、はじめは真ん中にフワフワしたものを置けばいいかな、と思っていたけれど、それだけだとつまらない。そこで画面端と綿をつなぐ一本の線を引いてみる。すると、少し花のように見えてきた。でも何か足りない。そこで更に、フワフワと連動したノイズを背景に落としてみることにした。すると、途端にその場に風が吹いたような見え方になった。
https://neort.io/art/br9ho443p9f04urh8emg
→ こちらのZINEに寄稿した文章を調整したものです